Contents:  
          比較的中身の濃い半月だったと思う。 がんの本は なし。
      
      
(1)アメリカン・スクール / 小島信夫 / 新潮文庫  
          表題の芥川賞作品を中心とする短編著作集。
      久々に読む芥川賞作品 (昔のですが)。 戦時中が舞台の作は救い難く理不尽で暗い。 戦争は絶対悪です。
      抵抗できない理不尽に流されて壊れていくところに、もはや理性は何の意味もなさないことを誰もが知るべし。
      でも、戦時中が舞台でない作には若干の救いがあります。
      
      
(2)辞書になった男 / 佐々木健一 / 文芸春秋  
          国語辞書編纂の 2巨頭、見坊豪紀氏と山田忠雄氏の物語。
      ちょっと知的な三面記事風で面白いです。
      が、本来は彼らの情熱と努力、そして業績にこそ注目すべきですね。
      
      
(3)心を整える / 長谷部誠 / 幻冬舎文庫  
          サッカー日本代表ゲームキャプテンの著書。
      ブラジルワールドカップは残念な結果だったが、ナショナルチームのこの真面目なキャプテンは信頼できそうです。
      彼も含めた日本の若者たちに期待したい。
      
      
(4)絶望の裁判所 / 瀬木比呂志 / 講談社現代新書  
          裁判所の実態は精神的収容所群島であるとする、元裁判官による危機啓発の書。
      自己の良心にのみ拘束されるべき裁判官が、イエスマンのみを重用する裁判所官僚組織に収容され、
      事大主義のヒラメとなっていく。
      僕の勤務先もレベルは低いが全く同じです。 ただ、そこのヒラメは裁判官と違って頭悪そうですが (笑)。 
          ソルジェニーツィンの収容所群島、今、読もうと思っても読めませんね。
      古書店探すか、街の図書館行くか、、、?。
      
      
(5)白夜の忌 / 竹岡準之助 / 幻戯書房  
          最近亡くなった芥川賞作家三浦哲郎氏との交友を旧来の友が綴った書。
      忍ぶ川、恥の譜 の著者三浦氏の人となりがある程度うかがえて面白いが、やはり三浦氏の著作そのものを読むに如かずです。
      
      
(6)数学-想像力の科学 / 瀬山士郎 / 岩波書店  
          数学に興味を持てない学生が数学好きになれるように著された本らしいが、これはいかんでしょう。 
      題名に惹かれて買ってしまいましたが失敗でした。 
      
      

      
          経験から言うと、新書系は本書も含め 9割方駄書ですね。
      
      
(7)葭の渚 / 石牟礼道子 / 藤原書店 (写真)  
          中年以降となると若い時とは感性が異なってくるようで、感銘を受ける本にはなかなか巡り会えないのだが、
      近年感銘を受けた数少ない本の中の筆頭が、石牟礼道子氏の "苦海浄土" です。
      日本語の美しさ、自然への慈しみ、公害への怒り、弱者への寄り添い、、、
      神話的太古の昔の日本人の原点へと手を引かれていくような不思議な優しさ。
      三島の硬質さ、芥川の繊細さ、川端の情緒、梶井の奇跡の心理描写 などの優れた日本現代文学の中で
      彼女の不思議な優しさもしっかり輝いています。 
          本書はその石牟礼氏の自伝。 彼女の感性がどのように育まれたのか、その背景がよくわかります。
      でも いち押し とはいかないなぁ。 "苦海浄土" 執筆時はやっぱり何かが憑いていたんでしょうか?。