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置き場所がなくなったので読み終わった本を売ってきました。
文庫本は置いておくんで売ったのは 80冊余り (写真)。
読んですぐ売るんなら買うなってな考え方もありはありなんですが、、、。
(1)死刑冤罪 / 里見繁 / インパクト出版
実際の死刑冤罪事件を取材考察した書。
本書には取り上げられていませんが、比較的最近の冤罪事件とされる東電 OL 殺人事件の高裁逆転有罪判決は当時判例時報で読みました
(なんでこんなん読んでんのん?)。
今振り返ると原審とは逆に疑わしきは被告人の不利益に裁判されてた印象が拭えなかったものの当時の僕は心情的には有罪でよしとしていたように思います。
僕のような小市民がそう思ってもたぶん何の実害もないですが、裁判官が刑事裁判の大原則を外してはやっぱいけませんよね。
本書の著者は、裁判官は検察の主張に沿った判決を望んでいると看破しています。
そして一般人は検察の創作したストーリーを心地よく受け入れてしまう、、、。
死刑について言えば、以前からそうだったわけではないのですが最近の僕は廃止論に 1票です。
冤罪で死刑執行された人の命はもう取り戻せませんので。
※東電 OL 殺人事件:1997年、夜な夜な売春していた東電エリート OL が売春場所のアパートで殺害された事件。
不法滞在ネパール人が逮捕され一審無罪となるも検察のごり押しで勾留継続され帰国できず、高裁で有罪となり最高裁で無期懲役確定し服役。
事件から 15年後、再審で無罪が確定し元被告人は帰国できた。
(2)死者の花嫁 / 佐藤弘夫 / 幻戯書房
日本の葬送の歴史を考察する書。
墓参は江戸時代以降の風習であり実はその歴史はそれほど深くないらしい。
戦国以前は死者は葬ったら冥土に行ってしまうんであとはさよなら~って感じだったようで、
その頃は死者がこの世をうろつくという感覚はなく生者を邪する幽霊もほとんどいなかったのだと。
直接関係ないし意識もしていませんでしたが、僕の両親の葬送 (墓はない) は結果として戦国以前に少し先祖帰りかも?。
なかなか面白かったです。
でも、本書最後付近に唐突に登場する 3・11 はあんまり関係ないでなぁ。
(3)蓼食う虫 / 谷崎潤一郎 / 新潮文庫
谷崎は比較的最近に「卍」と「痴人の愛」を読んだだけ。
僕の読書歴、こんな程度でちょっと恥ずかしいです。
さて、解説によると本作は谷崎の前期作風から後記作風へと移行し始めた頃の作とのこと。
優柔不断なお金持ちの冷めた夫婦の何もない日常が淡々と綴られています。
夫婦の在り方が前期谷崎の余韻を残している感じなのかとも思いますが、アンニュイなこの夫婦には谷崎に期待したくなる異常性はありません。
発表当時の関西の風情がよくあらわされていていいです。
もう少ししたら「細雪」も読む予定。
(4)琥珀のまたたき / 小川洋子 / 講談社
日曜朝 FM 大阪で著者がいろいろな本の紹介をする番組を遊びに出かける車の中でよく聞いていますが、内容はほとんど右から左に抜けております。
本書は、老人となった兄が語る母親によって世間から隔離されて育った姉兄弟の異常な生活。
小説らしい小説でした。
淡々と綴られる語り口は、異常な生活を余儀なくされた彼らに一見優しいようで実は底辺では冷たい。
FM で聞こえる柔らかな話しぶりに隠された著者の一端を垣間見ました。
(5~7)大地の子 (一~三) / 山崎豊子 / 文春文庫
TV ドラマに感動した妻の勧めで読んでいます。
(一) の終戦時の中国描写は目をつむりたくなります。
安部公房の「けものたちは故郷をめざす」を思い出しました。
(二、三) は比較的平和。
全体の感想は (四) まで通読の後に。
(8)太宰治シリーズ3 / 青空文庫
「二十世紀旗手」「Human Lost」「燈籠」「富嶽百景」「黄金風景」「女生徒」「懶惰の歌留多」「火の鳥」「花燭」「畜犬談」他
「黄金風景」が思いのほかよかったです。
思い出は自然と美しく変わるのか、或いは美しい心が思い出をも変えるのか?。
「畜犬談」もよかったです。
子供のころたくさんいた野良犬って結構恐かったでなぁ。
今、野良犬全然いませんね。